2013年01月05日

イストリゲーム

4人でイストリゲームをする
イスが4つあり 全員座って 時が止まる
posted by みずすまし at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 詩と断片 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

方位磁針

天竺は 西の彼方
どこかで気が付かなければ戻ってくる

真実は たとえば北の彼方
北極を過ぎ 北極星を通って
どこまでもたどりつけない北の彼方
目指すことだけ許されている
posted by みずすまし at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 詩と断片 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

俺たちは家の中にいる
そうして 外に出たいと思い
そうして 外に出たのだが
今度俺たちは 家の外の中にいるのだ
posted by みずすまし at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 詩と断片 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シルちゃん

ねえ シルちゃんはペリカン好きかなあ
 うん 好きなんじゃないかねえ
じゃあ ペリカンは魚好きかなあ
鯛とひらめどっちが好きかなあ
 うん どうかねえ好きじゃろうよ
 鯛あげたらおいしいおいしいって食べると思うよ
たべるかなあ
 食べるよ
うーん シルちゃんは人骨好きかなあ
 シルちゃんは そんなの嫌いって コワイから嫌いって

シルちゃんは シャム猫は好きかなあ
 好きかも知れんねえ
シャム猫は鯛たべるかなあ
 うん きっとひらめも食べるじゃろうね
そっかー シルちゃんは武士好きかなあ
 シルちゃん嫌だって コワイコワイから嫌いって
ふうん
posted by みずすまし at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 詩と断片 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ひらひら蝶がとんでいる
僕は虫捕り網を持って川沿いの道にいた
ほおに大きなアザのある男の子が
きれいだろ
その蝶いちどつかまえるとすぐになつくんだ
ぼく前つかまえたことあるんだ と言った


ひらひら蝶がとんでいる
僕は蝶から目を離さないように気をつけながらそれを聞いて
あとは夢中で網を振り回した
意外なほどかんたんに僕は
蝶を捕まえることに成功した


アザの子に促されたわけではないけれど
僕は当然そうしなきゃいけない気がして
網から蝶をはなすと
はたして蝶ははじめの美しさそのままに
僕のまわりをひらひらととびまわった

見とれる僕のほおに蝶はそっととまり卵を産みつけた


posted by みずすまし at 23:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 詩と断片 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

与ひょうの恩返し

 つうの織る布は鶴の千羽織というものだ、与ひょうは惣どからそう聞いた。なんでも生きとる鶴の羽を千枚抜いて織った織物だと。
 与ひょうは何百羽という鶴をつかまえてくる。
 つう、おまえにばかり申し訳ねえ。こりゃあ恩返しだ。裏にもまだ沢山つかまえてあるだ。なあ、つうよ。いいか、手伝って欲しいことがあったら何でもおらに言うだぞ。
ラベル:短い話
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ライオンのいる浴室

 弟が言うには、飼育係が帰ってしまったためだったか、ライオンをここに置いておくしかないのだそうである。刺激しなければ人は襲わないからと弟は、ぼくと背中合わせのままで友達に電話をかけ始めた。最近買ったという防水式のだろう。なるほどライオンは人が良さそうで、笑い顔こそ気味悪いが、お腹をあお向けにしてまるで安心しきっているようすだ。ライオンがじゃれかかって来た。刺激が悪いなら逃げ出すわけにも行かず、どうしたものかと思う。すでにライオンはなかばあお向いたぼくの上にのしかかり、彼さえその気なら。しかし、彼はニヤニヤ笑っているだけで、食べる気も殺す気もまるでないようなのだった。ライオンがぼくの顔をしげしげと見つめる。床屋のようにぼくの首をひねり、右の耳を見て、次は……だめだ、左を見てはいけない。左にはぼくが昔よくからかわれたホクロがあるのだ。ライオンは力ずくに左耳を見る。表情が変わった。妙な顔をした後で、なんでそうなのかぼくを非難するような顔つきだ。仕方がないのに。いよいよライオンの爪がぼくのわき腹に突き立てられる。なんて長い爪だ。まるで猛禽類のような鉤爪だ。そういえば、ぼくのホクロはちょうど鉄砲玉の痕くらいの大きさなのだった。

ラベル:短い話
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月夜のおうだんほどう

 おぼろ月夜です。ぼくの家の屋根の上で、横断歩道が月を見ながら団子を食べていました。きっと何かよっぽどのことがあったに違いありません。軽トラックの陰で観察していると、何を思ったのか、横断歩道はすっくと立ち上がりました。そして、するすると伸びて、月にとどいたのです。ぼくはおどろいて屋根に上りました。それから、そっと横断歩道にさわってみました。石膏みたいにコチコチに固まっています。ぼくは前からいちど月に行ってみたいと思っていました。

 白いはしごに足をかけてみると、登れそうです。でも、ニ段目か三段目まで登ったとき。急に横断歩道がぶるぶるっと体を震わせて、ぼくをふり落としました。軽く宙に浮いた横断歩道の足がびょーんと、町の空をすべっていきます。ああ、やっぱり地球は自転してるんだなあ。月に向かって縮んでいく横断歩道を見ながら、ぼくはそこに置いてあった団子を食べました。ちょっとカルシウムの味がしました。

 そんなわけで、ぼくの家の前の道路には横断歩道がなくて、あれからずうっと信号機が目をぱちぱちさせています。いつかぼくはあいつらを月につれて行ってやるのです。
ラベル:短い話
posted by みずすまし at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アリマキ

 ぼくが窓からつきとばした。アリマキはいつものロクロ首のまねで、最後までぼくたちをからかった。降りてそこまで行ってみると、彼の体はすっかり袋状に変化していた。首のあったところが袋の口で、その穴の中には黒い飴玉がいっぱい。恋人のアザミと、ぼくはその飴を森の中に撒いた。蜂が集まってくる。
――よかった、今年の冬はハチミツが不足していたんだ。
ぼくたちの撒いた飴のまわりに、蜂が糸をだして巣をつくりはじめる。そこらじゅうに綿菓子みたいなコロニーができる。

 食事中ぼくのくちびるに虫がとまるようになった。「ほっぺに虫がついてるよ」とアザミは今朝その虫を食べてくれた。アザミについた虫はぼくが食べた。
ラベル:短い話
posted by みずすまし at 23:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

浦島次郎

兄が帰らないので次郎は亀を助けて龍宮へ。
「兄さん! いったい今なん時だと思ってるんですか」
次郎は土産にたまごをもらう。「そのなかにはおまえの未来が入っている。けっして割ったりせぬように」乙姫が注意書を読み上げる。

地上に戻ったが兄はおらず、おじいさんが泣いていた。太郎を見なかったかときくと、わしがその太郎じゃあと泣く。おどろいて次郎はたまごを落としてしまう。ぼわんと立ち上る煙。なかからもうひとりおじいさんが出てくる。あなたはだれですか。
「わしか、わしは次郎だ。
 うちへ帰ってごらん、兄さんが待ってるよ」
そして煙のように、ふたりのおじいさんは消えてしまう。
ラベル:短い話
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鯨にのまれたときの処方箋

 1。ピアノを探す。
 2。ピアノを弾く。
 3。クジラ、拍手代わりに噴水してよろこぶ。
 4。噴水とピアノとあなたがクジラの外に飛び出す。
 5。次の人とクジラのため、クジラにピアノを返す。
 6。ピアノの持ち主が、そこへたまたま通りかかる。
 7。正直に話す。
 8。持ち主、クジラの中に入っていく。
 9。修繕の済んだピアノを置いて持ち主が出てくる。
10。あとはお任せします。
ラベル:短い話
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天ぷら

昼ご飯を食べに行くと、教授とばったり出くわした。何の因果だろう、生物学の実習で天ぷらを作ることになったのだ。深海魚3点セットは高くて手が出ない、アカエイを持ち上げて諦め、ヒラメで我慢する。イタリア人の教授が手本を示そうとするが、僕にはタマゴを使わないのが信じられない。
ひと悶着あるか不安だったが、僕が制したら「お前がやってみろ」と来た。店長に見守られる中、タマゴを割る…ところがタマゴが2重3重卵なのだ。いちばん内側のタマゴからはくちばしでつつく音までする。ハゲタカのタマゴらしい。店長が「俺もやってみたけどそうだった」と僕に耳打ちをする。

僕がヒビの入ったタマゴをパンツの中に隠すと、温められてか鳥は孵化した。でもズボンのファスナーに向かって、雛は突付き続けている。
ズボンから出してやる。
店長の話では、孵ったばかりの雛も成鳥と変わらない骨格で、すぐにでも空を飛ぶことができるのだそうだ。羽毛も黒々と生えてきている。

困ったものだと店長は言った。
ラベル:短い話
posted by みずすまし at 23:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

現在から来た男

「ワープとは違うのでしょうか」おれはその男にたずねた。
「タイムマシンとは何か。簡単だ。過去へ行けば過去の自分に会える。そこで過去の自分を殺せばタイムパラドクスが起こる。未来へ行けば未来の自分に会える。そこで未来の自分が私を殺せば、タイムパラドクスが起こる。つまり――」男は言った。
「タイムマシンとはそのような装置だ」
「それで、今回の発明というわけですね」
「そう。長い間タイムマシンが発明されなかったのは、何もそんなパラドクスのせいではない。パラドクスは予測される結果であり、原因ではないのだ」
男は、遠くを見るような目をして、煙草をくわえた。おれがライターを差しだす。重い沈黙。瞑目し、難しい顔をして男は言った。
「タイムマシンを作れないのは、予算が足りなかったからだ」
おれのシャープペンシルの芯が折れた。

「予算さえあれば、理論的にタイムマシンは可能だ。過去や未来へ行くには莫大なエネルギーが必要なのだ。試算してみると1グラムを1分間移動させるだけで国家予算の倍は必要だった。タイムマシンを作っても動かなければ意味がない……そう思い、なかば諦めかけようとしていたとき、私に天啓が下った」おれは息を飲んだ。
「なぜ誰も気がつかなかったのだろう。簡単なことだ。わかるかね。動かないタイムマシンを作ればよかったのだ。動かないならエネルギーは必要ない。よって、予算も要らない」
「しかし――」おれは言った。「私にはまだ良くわからないのですが、それにはどんな働きがあるのでしょう」
「よく考えてみたまえ。タイムマシンの働きはさっき説明したね。過去へ行けば過去の自分に会える。未来へ行けば未来の自分に会える。したがって、タイムマシンで現在に行けば――」
「まさか…」
「現在の自分に会える」
おれは感動してため息をついた。男は続けた。
「それに気が付けば、後は簡単だった。製作には1週間もかからなかった。いつか来る日のために準備していた材料が半分余ったくらいだ。ほら、そのカーテンの後ろに――」おれは振向いた。カーテンがある。
「めくってみたまえ」おれの手はすでにカーテンの裾を握っていた。興奮していたのだろう、男が立ちあがったのに気が付かなかった。鈍い衝撃があり、おれは気を失った。


目が覚めたのは「いかにも」という形をしたカプセルの中だった。男が背を向け、何かパネルを操作しているのが見える。体中を悪寒が走った。おれは現在の自分などという、わけの分らないものに会うのは嫌だ、ここから出してくれ!

男が振向いた。満面の笑み。――おれだった。
ラベル:短い話
posted by みずすまし at 21:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

キスより・簡単

「ふたり仲良く心中か」この道20年のヤマさんがつぶやく。
捜査の結果、2冊の日記帳が発見された。

男の日記「○月×日 キスしてくれたら死んでもいい」
女の日記「○月×日 キスしたら死んでやる」

目撃者を待つまでもない。
ヤマさんには悪いが、これは事故である。キスがあったのだ。
ラベル:短い話
posted by みずすまし at 21:14| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

バレンタインデー

誰かのチョコレートを蹴飛ばしてしまった。たくさんのチョコレートを貰い上機嫌で、歌を歌いながら歩いていたときのこと。からんできたのはそのチョコの持ち主ではなく、その友人だと名乗る男だ。やい、どうしてくれんだ! と責めたてる。僕は蹴飛ばしてしまったチョコレートを拾うと、黙って食べた。砂だらけだ。代わりに僕のをひとつ差し出した。彼はそれを手で払いのけると、ぐちゃぐちゃに踏み潰す。そして、静かに命令するのだ。食べろ、と。

儀式は僕のチョコレートがすっかりなくなってしまうまで続いた。
ラベル:短い話
posted by みずすまし at 21:12| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

マゾと悪魔

ある日、とても欲深いマゾのもとに悪魔が現れた。

悪魔「ふはははは、お前の望みを何でもひとつだけ叶えてやろう」
マゾ「あ、悪魔様、ちょうどいいところに! あのう、どうか僕をイジメて……。あ、いえ、イジメないでください。って言うか。つまり、僕の望みを絶対叶えないで欲しいんです」
悪魔「なぬ!? そ、それが、いわゆるひとつのお前の望みか?」
マゾ「はい」
悪魔「うーん。そうすると、どういうことになるのだ?」
マゾ「え。そんなの、僕が知るわけないじゃないですか。でも、僕のご主人様は、僕を簡単に悦ばせてくれるんですよ。悪魔さん、それくらい出来ないんですか?」
悪魔「ぬぬ、言わせておけば! よろしい、叶えよう」
マゾ「だから、叶えちゃダメなんですってば」
悪魔「あ、そうか。俺はいったいどうすればいいんだ……」

悪魔にはサドの才能がなかった。
ラベル:短い話
posted by みずすまし at 21:07| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

イカの足

ノアというのが イカの名前でした
目玉をさわると巻きついてきます
2本の腕と 立派な2本の足とが自慢で
僕よりも少し背が高かった

その夏知り合った女の子と海に行ったとき
彼女が面白いものを見つけた と僕を呼びました
そして 僕をびっくりさせるつもりで
あの大目玉にさわってしまったのです
ノアは大慌てで彼女に巻きつきました

イカとけんかをするときは
イカに巻かれると思ってはいけません
イカを巻く くらいの気持ちが大切です

たくさん水を飲んだけれど
彼女は助かりました
でも僕の左足はヒザから先がどこかに行ってしまって・・・

病院でみてくれた先生が腕組みをしています
やっと何かを言いかけたとき
窓からノアが入ってきて言いました
先生 俺の足を使ってくれ

僕が断わるのも聞かずノアは
自分で自分の足を切り落としました
先生はノアから足を受け取ると
早速 手術を始めました

先生は名人でした
見事な左足が
―爪がないのを除けばほとんど完璧です―
僕に戻りました
神業です いいえ職人技でした
実は先生 副業におすし屋さんもしていたのです

となりで目を覚ました彼女は
僕の新しい左足を見るなり また気を失いました

ノアはまだ診察室にいました
ゆかでぐったりしています
先生が留守みたいなので
―たぶん おすし屋さんの仕事だと思います―
僕もゆかに寝そべって
少しの間だけ 僕はノアと話をしました

イカの足ってふつう10本だよね
  3本の奴もいるさ
足 痛まない?
  そっちこそ具合は?

       ・
       ・
       ・

砂浜まで戻ってきた ノアと僕は
最後に力いっぱい握手をして別れました
ノアの右手は
けんかしたときに思ったのより ずっとやわらかでした

ノアのことが懐かしくなると
僕はときどき左足と握手をします
ラベル:短い話
posted by みずすまし at 20:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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