2013年01月05日

天ぷら

昼ご飯を食べに行くと、教授とばったり出くわした。何の因果だろう、生物学の実習で天ぷらを作ることになったのだ。深海魚3点セットは高くて手が出ない、アカエイを持ち上げて諦め、ヒラメで我慢する。イタリア人の教授が手本を示そうとするが、僕にはタマゴを使わないのが信じられない。
ひと悶着あるか不安だったが、僕が制したら「お前がやってみろ」と来た。店長に見守られる中、タマゴを割る…ところがタマゴが2重3重卵なのだ。いちばん内側のタマゴからはくちばしでつつく音までする。ハゲタカのタマゴらしい。店長が「俺もやってみたけどそうだった」と僕に耳打ちをする。

僕がヒビの入ったタマゴをパンツの中に隠すと、温められてか鳥は孵化した。でもズボンのファスナーに向かって、雛は突付き続けている。
ズボンから出してやる。
店長の話では、孵ったばかりの雛も成鳥と変わらない骨格で、すぐにでも空を飛ぶことができるのだそうだ。羽毛も黒々と生えてきている。

困ったものだと店長は言った。
ラベル:短い話
posted by みずすまし at 23:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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