2013年01月15日

いつかのエイプリルフール

 こういうイベントは大切にしたいのだけれど、とくに何も思いつかなかった。愉快なうそがいいな。俺は二枚目だとか、天才だとかね。罪のないホラがいい。

 昨日昼寝していたら、知り合いの婆ちゃんがうんこを投げて宮殿を作る夢を見た。俺の婆ちゃんはうんこの達人なんだと紹介されて……。

 これでうんこの夢は三回目だ。一回目はずいぶん昔に見た。うんこ合戦の夢。いかに芸術的なうんこが出来るかを競い合う。Aは鼻の形をしたうんこをする、鼻糞である。Bは耳の形をしたうんこをする、耳糞だ。耳の方が複雑な形をしているためBの勝ちとなった。これ以降の戦いについては、汚な過ぎるため省略する。

 二回目はスーパーうんこマンの夢。オナラで空をとぶヒーローならキン肉マンがいるのだが、我らがスーパーうんこマンはうんこで空を飛ぶ。もりもりもりと、いったいその小さな体のどこに、それだけのうんこが隠されているのか。尻から伸びるうんこの柱に支えられ、彼は空へと舞い上がる。方向転換も思いのままだ。飛び去った空には、複雑に折れ曲がったうんこが残っている。さようならうんこマン。僕らは君の勇姿を忘れない。

 さて、達人の婆ちゃんだが、洞窟のようなところに住んでいた。半透明のうんこを投げては積み重ね、それで巧みに様々な動物の彫刻を作ってくれた。ぶつかると壁が爆発するうんこもあった。崩れた壁の中から、婆ちゃんが出てくる。振り返ると婆ちゃんは消えている。瞬間移動のイリュージョンだ。僕たちは感動した。いよいよ宮殿の建設。無造作に投げた(ように見える)うんこが積み重なる。さすがに一日では無理だ。僕は泊まり込みで見守った。翌日、そして翌々日。徐々に形を取り始める白亜の宮殿。原料たるうんこの面影は微塵もない。週末の追い込みは凄まじく、寝て起きると橋ができている、塔が建っている。魔法だ。日曜の朝、窓から外を見ると宮殿があった。
 すごい。僕は友人と顔を見合わせ、感激に胸震わせながら、足を踏み入れた。しかし、完璧に見えたこの宮殿はまだ完成していなかったのだ。あと1ブロックの不足のために、僕の足元の橋が崩れた。それを引き金に、宮殿は崩壊した。

 ベッドに横たわる婆ちゃん。怪我は大したことはないが、もう宮殿は作れないのだという。わたしも年だからねと笑う。でも最後にいい仕事ができたよ。ありがとう。友人にもお礼を言われたが、僕は謝りたかった。どうしていいか分からなかった。


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2013年01月05日

与ひょうの恩返し

 つうの織る布は鶴の千羽織というものだ、与ひょうは惣どからそう聞いた。なんでも生きとる鶴の羽を千枚抜いて織った織物だと。
 与ひょうは何百羽という鶴をつかまえてくる。
 つう、おまえにばかり申し訳ねえ。こりゃあ恩返しだ。裏にもまだ沢山つかまえてあるだ。なあ、つうよ。いいか、手伝って欲しいことがあったら何でもおらに言うだぞ。
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ライオンのいる浴室

 弟が言うには、飼育係が帰ってしまったためだったか、ライオンをここに置いておくしかないのだそうである。刺激しなければ人は襲わないからと弟は、ぼくと背中合わせのままで友達に電話をかけ始めた。最近買ったという防水式のだろう。なるほどライオンは人が良さそうで、笑い顔こそ気味悪いが、お腹をあお向けにしてまるで安心しきっているようすだ。ライオンがじゃれかかって来た。刺激が悪いなら逃げ出すわけにも行かず、どうしたものかと思う。すでにライオンはなかばあお向いたぼくの上にのしかかり、彼さえその気なら。しかし、彼はニヤニヤ笑っているだけで、食べる気も殺す気もまるでないようなのだった。ライオンがぼくの顔をしげしげと見つめる。床屋のようにぼくの首をひねり、右の耳を見て、次は……だめだ、左を見てはいけない。左にはぼくが昔よくからかわれたホクロがあるのだ。ライオンは力ずくに左耳を見る。表情が変わった。妙な顔をした後で、なんでそうなのかぼくを非難するような顔つきだ。仕方がないのに。いよいよライオンの爪がぼくのわき腹に突き立てられる。なんて長い爪だ。まるで猛禽類のような鉤爪だ。そういえば、ぼくのホクロはちょうど鉄砲玉の痕くらいの大きさなのだった。

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月夜のおうだんほどう

 おぼろ月夜です。ぼくの家の屋根の上で、横断歩道が月を見ながら団子を食べていました。きっと何かよっぽどのことがあったに違いありません。軽トラックの陰で観察していると、何を思ったのか、横断歩道はすっくと立ち上がりました。そして、するすると伸びて、月にとどいたのです。ぼくはおどろいて屋根に上りました。それから、そっと横断歩道にさわってみました。石膏みたいにコチコチに固まっています。ぼくは前からいちど月に行ってみたいと思っていました。

 白いはしごに足をかけてみると、登れそうです。でも、ニ段目か三段目まで登ったとき。急に横断歩道がぶるぶるっと体を震わせて、ぼくをふり落としました。軽く宙に浮いた横断歩道の足がびょーんと、町の空をすべっていきます。ああ、やっぱり地球は自転してるんだなあ。月に向かって縮んでいく横断歩道を見ながら、ぼくはそこに置いてあった団子を食べました。ちょっとカルシウムの味がしました。

 そんなわけで、ぼくの家の前の道路には横断歩道がなくて、あれからずうっと信号機が目をぱちぱちさせています。いつかぼくはあいつらを月につれて行ってやるのです。
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アリマキ

 ぼくが窓からつきとばした。アリマキはいつものロクロ首のまねで、最後までぼくたちをからかった。降りてそこまで行ってみると、彼の体はすっかり袋状に変化していた。首のあったところが袋の口で、その穴の中には黒い飴玉がいっぱい。恋人のアザミと、ぼくはその飴を森の中に撒いた。蜂が集まってくる。
――よかった、今年の冬はハチミツが不足していたんだ。
ぼくたちの撒いた飴のまわりに、蜂が糸をだして巣をつくりはじめる。そこらじゅうに綿菓子みたいなコロニーができる。

 食事中ぼくのくちびるに虫がとまるようになった。「ほっぺに虫がついてるよ」とアザミは今朝その虫を食べてくれた。アザミについた虫はぼくが食べた。
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浦島次郎

兄が帰らないので次郎は亀を助けて龍宮へ。
「兄さん! いったい今なん時だと思ってるんですか」
次郎は土産にたまごをもらう。「そのなかにはおまえの未来が入っている。けっして割ったりせぬように」乙姫が注意書を読み上げる。

地上に戻ったが兄はおらず、おじいさんが泣いていた。太郎を見なかったかときくと、わしがその太郎じゃあと泣く。おどろいて次郎はたまごを落としてしまう。ぼわんと立ち上る煙。なかからもうひとりおじいさんが出てくる。あなたはだれですか。
「わしか、わしは次郎だ。
 うちへ帰ってごらん、兄さんが待ってるよ」
そして煙のように、ふたりのおじいさんは消えてしまう。
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鯨にのまれたときの処方箋

 1。ピアノを探す。
 2。ピアノを弾く。
 3。クジラ、拍手代わりに噴水してよろこぶ。
 4。噴水とピアノとあなたがクジラの外に飛び出す。
 5。次の人とクジラのため、クジラにピアノを返す。
 6。ピアノの持ち主が、そこへたまたま通りかかる。
 7。正直に話す。
 8。持ち主、クジラの中に入っていく。
 9。修繕の済んだピアノを置いて持ち主が出てくる。
10。あとはお任せします。
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天ぷら

昼ご飯を食べに行くと、教授とばったり出くわした。何の因果だろう、生物学の実習で天ぷらを作ることになったのだ。深海魚3点セットは高くて手が出ない、アカエイを持ち上げて諦め、ヒラメで我慢する。イタリア人の教授が手本を示そうとするが、僕にはタマゴを使わないのが信じられない。
ひと悶着あるか不安だったが、僕が制したら「お前がやってみろ」と来た。店長に見守られる中、タマゴを割る…ところがタマゴが2重3重卵なのだ。いちばん内側のタマゴからはくちばしでつつく音までする。ハゲタカのタマゴらしい。店長が「俺もやってみたけどそうだった」と僕に耳打ちをする。

僕がヒビの入ったタマゴをパンツの中に隠すと、温められてか鳥は孵化した。でもズボンのファスナーに向かって、雛は突付き続けている。
ズボンから出してやる。
店長の話では、孵ったばかりの雛も成鳥と変わらない骨格で、すぐにでも空を飛ぶことができるのだそうだ。羽毛も黒々と生えてきている。

困ったものだと店長は言った。
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現在から来た男

「ワープとは違うのでしょうか」おれはその男にたずねた。
「タイムマシンとは何か。簡単だ。過去へ行けば過去の自分に会える。そこで過去の自分を殺せばタイムパラドクスが起こる。未来へ行けば未来の自分に会える。そこで未来の自分が私を殺せば、タイムパラドクスが起こる。つまり――」男は言った。
「タイムマシンとはそのような装置だ」
「それで、今回の発明というわけですね」
「そう。長い間タイムマシンが発明されなかったのは、何もそんなパラドクスのせいではない。パラドクスは予測される結果であり、原因ではないのだ」
男は、遠くを見るような目をして、煙草をくわえた。おれがライターを差しだす。重い沈黙。瞑目し、難しい顔をして男は言った。
「タイムマシンを作れないのは、予算が足りなかったからだ」
おれのシャープペンシルの芯が折れた。

「予算さえあれば、理論的にタイムマシンは可能だ。過去や未来へ行くには莫大なエネルギーが必要なのだ。試算してみると1グラムを1分間移動させるだけで国家予算の倍は必要だった。タイムマシンを作っても動かなければ意味がない……そう思い、なかば諦めかけようとしていたとき、私に天啓が下った」おれは息を飲んだ。
「なぜ誰も気がつかなかったのだろう。簡単なことだ。わかるかね。動かないタイムマシンを作ればよかったのだ。動かないならエネルギーは必要ない。よって、予算も要らない」
「しかし――」おれは言った。「私にはまだ良くわからないのですが、それにはどんな働きがあるのでしょう」
「よく考えてみたまえ。タイムマシンの働きはさっき説明したね。過去へ行けば過去の自分に会える。未来へ行けば未来の自分に会える。したがって、タイムマシンで現在に行けば――」
「まさか…」
「現在の自分に会える」
おれは感動してため息をついた。男は続けた。
「それに気が付けば、後は簡単だった。製作には1週間もかからなかった。いつか来る日のために準備していた材料が半分余ったくらいだ。ほら、そのカーテンの後ろに――」おれは振向いた。カーテンがある。
「めくってみたまえ」おれの手はすでにカーテンの裾を握っていた。興奮していたのだろう、男が立ちあがったのに気が付かなかった。鈍い衝撃があり、おれは気を失った。


目が覚めたのは「いかにも」という形をしたカプセルの中だった。男が背を向け、何かパネルを操作しているのが見える。体中を悪寒が走った。おれは現在の自分などという、わけの分らないものに会うのは嫌だ、ここから出してくれ!

男が振向いた。満面の笑み。――おれだった。
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キスより・簡単

「ふたり仲良く心中か」この道20年のヤマさんがつぶやく。
捜査の結果、2冊の日記帳が発見された。

男の日記「○月×日 キスしてくれたら死んでもいい」
女の日記「○月×日 キスしたら死んでやる」

目撃者を待つまでもない。
ヤマさんには悪いが、これは事故である。キスがあったのだ。
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